投稿日:2025/12/10

RO膜×オートストレーナによる溶媒再利用ライン改良|国内事例

RO膜×オートストレーナによる溶媒再利用ライン改良|国内事例

1.課題|溶媒の再利用ライン(濃縮プロセス)に用いる前処理装置が必要

お客様は、RO(逆浸透)膜の製造をリードする化学メーカーであるN社様。
RO膜は、海水淡水化や水処理分野で欠かせない存在であり、近年では環境課題や水資源の有効利用を背景に、需要が拡大しています。

RO膜製造工程では、有機溶媒が使用されます。N社様では、その有機溶媒を“再利用”するため、既存のラインの改良・更新を行う計画が持ち上がりました。
使用済みの有機溶媒を再利用するには濃縮プロセスが必要になります。しかし、従来の方式では大量のエネルギーを必要とするため、コスト・環境負荷の両面で課題となっていました。

そこで、N社様は自社で製造しているRO膜を利用した濃縮プロセス導入を決定。現状のライン方式に比べ エネルギー削減が期待できると試算されています。
ただし、使用済みの有機溶媒には、RO膜製造の過程で発生する樹脂片など 微細な異物が含まれています。RO膜は非常に微細な孔を持つため、濃縮用ラインのRO膜に使用済み溶媒をそのまま流すと詰まりやすく、前処理による異物除去が不可欠です。
ボールフィルターにお問合せいただいたのは、「前処理段階で微細な異物を取り除く」ためにオートストレーナを使えるのではないかと期待されたからでした。

 

2.導入|オートストレーナでRO膜に流入する微細な異物を除去

今回導入いただいたのは、ボールフィルター6.18.3です。
N社様からは 樹脂片のような微細な異物にも高い効果を発揮する、ステンレス製の高耐久仕様でとのご要望をいただきました。

ろ過精度は50μm。実は、このサイズの異物を確実に捕捉できるステンレス製のオートストレーナは、ボールフィルター以外にはほとんどありません。
不織布やプラスチック製フィルターでは、ステンレス並みの耐久性を確保することは困難です。ボールフィルターはステンレス製で耐久性が高く、微細な異物も確実にキャッチし、溶媒内から除去します。

さらに、クロスフロー逆洗方式により、フィルター内部にたまる微細な異物を自動的に隅々まで洗い流すため、日々の洗浄の手間も不要です。
試運転では、有機溶媒中に含まれる微細な異物を効率的に除去し、RO膜の安定運転に寄与することを確認されました。

3.結果|RO膜前処理の安定化への貢献

ボールフィルターの導入により、RO膜前処理の安定化が図られ、溶媒再利用ライン改良が進めやすくなりました。
RO膜による濃縮プロセスは、現状ラインと比較してエネルギー消費量の削減や運転効率向上につながる可能性があります。
また、オートストレーナを用いた前処理で微細な異物を確実に除去することで、RO膜の安定的な運転が保たれ、ライン全体の効率改善にも貢献します。

仕様概要

筐体 ステンレス製
ろ過精度 50μm
流量 30m3/h
流体 有機溶媒、もしくはDMFを含む液

 

4.まとめ|RO膜は国内においての渇水対策、海水淡水化利用への応用にも期待大

今回の導入は第一期工事の段階であり、今後さらに濃縮率を高めるためのラインも計画されています。
N社様からは「RO膜は、海水淡水化に広く用いられているが、温暖化による水不足が進むことで、国内でも渇水対策としての排水再利用などの需要が拡大する可能性がある」との展望をお聞かせいただきました。

従来の方式ではエネルギー消費量が大きいため、エネルギー効率の高いRO膜による濃縮プロセスが求められました。
しかし、RO膜は微細な異物により詰まりやすく、その対策として詰まりを抑制できる高効率フィルターが不可欠です。
ボールフィルターのオートストレーナであれば、最低限のエネルギー消費でRO膜の詰まりを抑制できるため、本濃縮プロセスにおける最適な選択肢となり、RO膜の安定運転を下支えします。

これにより、エネルギー消費量の抑制や運転コストの低減が期待でき、環境負荷軽減と効率化の両立に寄与します。

N社様の事例は、溶媒再利用ラインにおいて、RO膜とボールフィルターを組み合わせることで、前処理安定化とライン効率の改善につながる好例です。
「目に見えない部分で確実に働く」ボールフィルターは、環境負荷低減と安定稼働の両立を支えるソリューションとして、今後も幅広い分野で活躍が期待されます。